まとめ 3

消防法の改正概要 大規模高層ビルや商業施設等につきましては、従前より防火管理者を定め防火管理業務を実施してきましたが、消防法の改正(平成19年6月)により、大地震発生時おける災害に対応できる防災管理者を定め、平成21年6月1日より防災管理業務も併せて行わせなければならなくなりました。これに伴い管理権原者には以下の項目について具体的に義務付けられました

1 消防法改正の背景
一定規模・高層建築物の特徴は、多数の者が利用するため消防防災上のリスクの大きい防火対象物である。これらの防火対象物においては、群集心理によりパニックが生じやすいこと、避難時の移動距離が非常に長くなること、地上とのアクセスが構造上大きく制限されること等から、適切な対策が施されていない場合の消防防災上のリスクは極めて大きく、社会公共への責任の観点から一定の措置を講じることが求められる。また、その後の応急活動は高度・複雑なものとなるため、防火対象物全体の状況に応じた組織的対応が不可欠であります。
 

 

大規模地震に対応するため、事業所における消防防災体制を強化と自衛消防力を確保することが求められ、各事業所においては防災計画の作成や訓練の実施は実施されておらず、内容あっては不十分なところが多い現状です。 震災時には、火災と異なる対応が必要であり、当該地域で同時多発的に火災や倒壊建物からの救出事案が発生し事業所における自助体制の確立が急務となっています。

 

 また、防火対象物の大規模・高層化等により急激に多数が利用する大規模・高層化された防火対象物が増加しています。このような防火対象物では、災害時における消火活動、通報連絡、避難誘導、救出・救護について、より高度・複雑な対応が必要となり、適切な対策が施されていない場合の消防防災上のリスクは極めて大きく、事業所の組織体制や活動計画にはなお未整備の部分が多い現状であります。

 

 

2 消防法改正の経緯
  大規模地震や首都直下地震の発生の切迫性している状況を踏まえ 、平成19年6月22日に「消防法の一部改正する法律」が成立公布され新たに一定規模・高層建築物について、自衛消防組織の設置と防災管理者の選任及び火災以外の災害に対して消防計画の作成が義務付けられ、その内容は次のとおりである。

 


(1)消防審議会の答申
  この様な現状を踏まえ、多数の者が利用し、円滑な避難誘導が求められる大規模・高層の防火対象物について、消防防災上のリスクに       伴う社会公共への責任のから、大規模地震等に対応した「自衛消防力を確保」するため、大規模地震等に対応した消防計画の作成及び自衛消防組織の設置を義務付けるよう、消防法及び同法に基づく政省令等を改正する旨の消防審議会の答申がされました。

 


 また、「事業所における消防計画の作成を支援するとともに、消防機関における当該事務の適切な運用を図るため、地震特有の対応事項を中心として、消防庁においてガイドラインの作成や情報提供等を行うことが必要である。」との提言がされた。 「業所の行う防災管理が地震対策の新技術等を踏まえた実効的なものとなるよう、防災管理者等に対する講習内容の充実とともに、ガイドラインの作成や情報提供等を行う事になりました。  

 

(2)ガイドラインの作成
  ガイドラインの作成は、改正消防法に基づき、大規模地震災害等に対応した消防計画を作成するに当たっての手引き書であり、地震災害等に対応した計画事項及び自衛消防組織の整備に係る共通的な内容を中心となっています。  また、このガイドラインに沿って計画を作成することにより、防火対象物全体で、その特徴に応じた実効性のある計画・体制が構築されるよう、作成手順や基本構成、地震等の災害対応上のポイント等をまとめたものであります。

 


 ガイドラインで大事な事は、一律に形式を示すものではなく、管理権原者のもとで、消防計画を主体的に作成するプロセス自体が、実効的な体制構築に資するものであることに主眼を置いています。  なお、事業形態の違いに応じて着目する危険性や求められる対応等に差異があるため、本ガイドラインを踏まえ、主要な事業形態毎に消防計画作成上の留意事項を追加していくこととされた。

 
3 消防法改正の主な改正点

 

3 消防法改正の主な改正点
消防法においては、従来から、消防法第8条により、火災の予防及びその被害の軽減のため、消防計画を定めこれに基づき防火管理上必要な業務を実施することとされているが、今回改正消防法第36条により、火災以外の政令で定めるものについて、その被害の軽減のため特に必要のある建築物に上記規定が準用されることとなったので、防災管理の対象となる災害、防火対象物および主な改正点は次のとおりである。

 

  

 

 

(1) 防災管理の対象となる災害(令第45条)
 ・地震のうち東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や首都直下地震の発生の切迫性のある大規模地震災害    が対象となり、実際には、震度6強程度の地震被害を想定し、これに基づいて消防計画を作成すべき地震が対象になります。
 


 ・毒劇物質の発散その他の総務省令で定める原因で生ずる特殊災害(NBCR 災害)が対象となり、消防計画上の対策は、通報連絡、避難誘導のみの実施となります。


 ・その他の事故等についても通報連絡や在館者の避難誘導が必要なばあいには、火災、地震における実施体制や要領等について共通する部分が多いため対象とし、消防計画上の対策は、通報連絡、避難誘導のみの実施となります。

 

(2) 防災管理の対象となる防火対象物(令第46条)
 防火管理の対象となるのは、多数の人が利用する大規模・高層の防火対象物などの消防防災上のリスクが大きく自衛消防隊を設置しなければならない防火対象物の要件に該当する建物です。
 


【用途】
百貨店、旅館・ホテル、病院、学校、オフィスビル、地下街等の全ての用途(共同住宅(5項ロ)、格納庫(13項ロ)、倉庫(14項)等は除く)
【規模等】
①延べ面積5万㎡以上
②階数5以上かつ延べ面積2万㎡以上
③階数11以上かつ延べ面積1万㎡以上
④地下街で延べ面積1000㎡以上


※従来からこれらの防火対象物においては、大規模、高層、その他消防防災上のリスクが大きく、全体の状況把握や応急活動が困難となるものであることから、防災センターにおいて総合操作盤等を中心に一元的な消防防災システムの構築が図られてきたところです。

 

 また、対象外となっている防火対象物の消防計画においても、大規模地震等への対応等について本ガイドラインを参考とすることが望ましいと考えられ、この場合においては規模や用途の違い等から生じる対応の差異に留意して計画の検討し行う必要があります。

 


 ただし、複合用途防火対象物(16項)にあっては、自衛消防隊の設置対象部分のみに自衛消防隊の設置義務がかせられているのに対して、防災管理については、用途にかかわりなくすべての部分に防災管理者の選任等の義務がかせられています。
 対象要件は次のとおりであります。  

(3) 防災管理者の選任と届出(法第36条において準用する第8条、令第47条)
 
地震の災害による被害の軽減のため、管理権原者は、防災管理者(新設)を選任し、届け出ると共に消防計画(防災管理編)の作成、届出、当該消防計画に基づく防災管理上必要な業務を実施させることこが義務付けられた。

 


 防災管理者の資格は、次の1、2の要件を両方満たすものである。

1 防災管理上必要な業務を遂行できる管理的又監督的な地位にある者。
2  必要な知識技能を有する者。
  ・甲種防火管理者の資格を有する者が、防災管理新規講習(5時間)を受講した場合(規則第51条の7第2項)
  ・防火・防災管理新規講習(14時間)を受講した者。
  ・消防職員で管理監督的な職に1年以上の経験のある者。
  ・消防団員で管理監督的な職に3年以上の経験のある者。

 ただし、法36条第2項により、防災管理者は、防火管理業務を併せて行うこととなったことから、防災管理者と防火管理者は同一人でなければならず、委託する場合は防火・防災管理業務を合わせて行わなければならない。

 

 また、甲種防火対象物の小規模テナント部分の特例により乙種防火管理者の資格で防火管理者を選任されていた部分について防災管理業務の対象となる場合は、防火・防災管理新規講習(14時間)を受講しなければならない。 

  

 

(4)消防計画の作成と届出(令第48条、規則第51条の8)
地震等のサイン外による被害軽減のために、管理権原者に指示を受けて、防災管理者が、消防計画を作成し、消防長へ届け出るこ とが義務付けられた。


消防計画に盛り込むべき項目は、規則第51条の8の規定及び「消防計画作成ガイドライン」等に例示された事項を防火対象物の実態に合わせて取り入れることが必要であるが、特徴的なものは、次のとおりである。

 


<特徴>
・地震発生時の被害の想定及びその対策を盛り込むこと。
☆ 火災については、建築構造、消防設備等においてその極限が織り込まれている。
☆ 地震については、建築物全体で同時多発的にその影響が生じることから、その被害を事前に想定し対策(業務内容、実施体制)を検討することが不可欠である。

 


・訓練を検証して消防計画を見直すことを明文化すること。     
・PDCAサイクルによりベターな体制を構築していくこと。
・NBCR災害については、関係機関への通報及び避難誘導の実施を求めること。
       

なお法第36条より防災管理者と防火管理者が同一人であることから防災管理に係る消防計画と防火管理に係る消防計画は、一本化することが望ましい。

 

5) 自衛消防組織の設置と届出(法第8条の2の5)
  災害時の応急対策を円滑に行い、防火対象物の利用者の安全を確保するため、多数も者の出入りする大規模防火対象物について、自衛消防隊の設置が義務づけられた。


 ア 自衛消防組織の編成
・自衛消防組織の全体の指揮をするものとして総括管理者(自衛消防隊長)を配置する。(令第4条の2の8、規則第4条の2の13)
 総括管理者の資格は、自衛消防業務講習受講者(新設)等の法定資格者でなければならない。


・要員の配置については、基本的な自衛消防業務(1初期消火活動、2情報の収集、伝達、消防設備等の監視、3在館者の避難誘導、4在館者の救出救護)について最低2名以上の要員が必要である。


・自衛消防隊は、本部隊と地区隊とで編成するが、内部組織を編成する場合は、本部隊の基本的な自衛消防業務(1〜4)の各班の班長(総括者)には、自衛消防業務講習させなければならない。


 このことは、教育の一環として消防計画に記載しなければならない。


イ 自営消防組織の設置に伴う消防長等へ届出が義務付けられた。(法第8条の2の5 規則第4条の2の15)
ウ 自衛消防組織未設置の際の設置命令が新設された。
エ 防火対象物の使用禁止命令の要件等に自衛消防隊組織設置命令違反等が追加された。 

 

6)防火管理点検の実施と報告(法第36条において準用する第8条の2の2)
防災管理業務の実施が義務となる対象物全てが防災管理点検制度の対象となり、管理権原者は、防災管理点検資格者(新設)の点検を年1回受け、その結果を消防長等に報告することが義務付けられた。(防火対象物点検の対象外でも義務となることがある。)

 


<主な点検事項>
・防災管理者選任の届出及び防災管理に係る消防計画作成の届出
・自衛消防組織設置の届出
・防災管理に係る消防計画に基づく防災管理業務が適切に実施されていること。
・共同防災管理の協議事項の届出  
・避難施設等が適切に管理されていること。
ただし基本的にはソフト面に限定されている。

 


<防災管理点検資格者>
 以下の者で、登録機関が実施する講習(8時間)を受講したもの。
・防火対象物点検者として3年以上の実務経験を有する者
・市町村の消防職員で、防災管理に関する業務について1年以上の実務経験を有する者。
・防災管理者として3年以上の実務経験を有する者。

 


<防災基準点検済証>(規則第51条の12第2項において準用する第4条の2の4第1項)
・防火対象物点検・防災管理点検の両方が義務となる防火対象物は、両方の表示要件を満たしている場合のみ、防火・防災基準点検済証として1枚のみ表示することができる。 

 

(7)共同防災管理協議会の設置と協議事項の届出(法36条において準用する第8条の2、規則第51条の11において準用する第4条の2)

 

防災管理業務の実施が義務となるが防火対象物で管理権原が分かれているものは、防災管理上必要な業務について協議して定め、消防長等へ届出することが義務付けられた。

 

<共同防災管理協議事項>
・共同防災管理協議会の設置運用に関すること。
・共同防災管理協議会の代表者の選任に関すること。
・総括防災管理者の選任及び付与すべき権限に関すること。

(防災管理者となる資格が必要)
・全体の消防計画の作成及びその計画に基づく避難の訓練の実施に関すること。
・避難口等の避難施設の維持管理。案内に関すること。
・地震等の災害が発生した場合の通報訓練。避難訓練に関すること。
・消防隊に対する必要な情報提供。誘導に関すること。
・その他の共同防災管理に関し必要な事項。


※共同防火管理協議会と共同防災管理協議会は、同じ組織等(共同防火・防災管理協議会、総括防火・防災管理者等)とすることが望ましい


※共同防災管理の全体の消防計画については、共同防火管理全体の消防計画と合わせて一つの計画と刷ることが望ましい。
 なおこの場合、協議事項の届け出様式は、共同防災管理と2枚となるが、中身の協議事項は一つでよい。
 また被害想定の反映等についても指導することが必要である。

 

消防法改正に伴う主な改正点と事業所が行わなければならない対応措置

 

消防法改正より「平成21年6月1日」までに管理権原者が行わなければならない事項 は、次の4項目です。

1 防災管理者の選任と届出
2 防災管理に係る消防計画の作成届出
3 自衛消防組織の設置と届け出
4 共同防火・防災管理協議事項の届出

 

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1 防災管理者の選任と届出
 管理権原者は、防災管理者を選任して届け出なければならない。

(1) 現在の甲種防火管理者の有資格者に、防災管理新規講習(5時間)を受講させて防災管理者の資格を取得させる。
(2) 防災管理者の選任し、選任届出を行うこと。

(注1)

法第36条により防災管理者と防火管理者は、同一 でなければならない

(注2)

乙種防火管理者または資格のない者は、防災管理 新 規講習(14時間)を受講しなければならない

2 防災管理に係る消防計画の作成届出
 管理権原者は、防災管理者に防災管理に係る消防計画を作成させ届出させなければならない。 

 

(注1)法第36条により防災管理者は、防災管理と防火管理に係る

   消防計画を作成し届け出なければならない。

 

(注2)消防計画は、防火・防災管理の一本化が望ましい。この場

   合 の届け出様式は、防火・防災の2枚、中身はひとつであ

   る。 なお、変更届の場合も中身のどこを直しても届け出様

   式は、防 火・防災の2枚、中身は、ひとつである。

3 自衛消防組織の設置と届け出
管理権原者は、自衛消防組織を設置して届け出なければならない。

(1) 自衛消防業務講習修了者を新設の統括管理者(自衛消防隊長)としなければならない。
(2) 自衛消防組織を設置して届け出なければならない。
なお、複合用途においては、当該用途の権原者が共同して設置して良い。

(注1)

自衛消防業務講習は12時間講習、または、防災セ ンター要員講習修了者3時間の追加講習である。

(注2)

本部隊に消火、通報、救出救護、避難誘導等の班組 織を置 く場合は、各班張に教育として自衛消防 業 務 習を受講させる 旨を消防計画に明記すると共 に 6月1日以降受講させ法定資格 を取得させ なけれ ばなら ない。

4 共同防火・防災管理協議事項の届出
 複合用途の(複数管理権原者)の場合は、共同防火・防災管理協議会を設置して協議事項を届け出無ければならない。

(1) 共同防災管理協議事項と共同防火管理協議事項の一本化が望ましい。
(2) 届出様式は、防火・防災の2枚、中身は一つである。
(3) 統括防災管理者と統括防火管理者は、同一人でなければならない。

消防法改正により「平成21年6月1日」以降に管理権原者が行わなければならない事項 は、次の2項目です。

1 防火・防災管業務の委託
2 防災管理点検

1 防火・防災管業務の委託

(1)  消防法第36条により防災管理者は、防火管理者と同一人でなければならない、実質的に防災管理業務は、一体で行わなければならないので、6月1日以降には、防火管理を加えて防災管理業務の業務委託を合わせて契約を行う必要がある。
(2)

 委託者は、自衛消防組織における役割の範囲を検討する必要がある。

特に自衛消防儀用務法定資格者の役割については、検討の必要がある。
(例)総括管理者(自衛消防隊長、本部隊班長等)

(3) 被害想定等
 想定のうち消防用設備については、消防用設備等の法定資格者が、契約の内容によっては、専門的立場から防災管理者にアドバイスをする必要も考えられる。

 

2 防災管理点検
 従来の防火対象物点検に加えて6月1日以降は、防災点検を1年以内(平成22年5月31日まで)に実施する必要があるので、防災管理点検とは別に防災管理点検の契約も対応する必要がある。
 (注)委託する場合は、委託検討と実施時期、標識等について注意する必要がある。

(1)  標識は、防火対象物点検と防災管理点検の両方が「適正」の場合のみ1枚の標識「防火・防災点検済証」が掲出できる。
第1回目の防災管理点検を実施するまでは、「防火点検済証」が掲出する
(2)  第1回目の防災管理点検を実施時期には、注意を要する。実施前に防災訓練を行わないと「不適」となる。
(3)  防火対象物点検の特例認定は、次の更新まで、防災点検の結果いかんにかかわらず有効であり、「防火優良認定証」を掲示できる。
なおこの防災管理点検の特例認定は、平成24年6月1日以降にでなければ認定申請できない。この場合は、「防火優良認定 証」1枚のみである。
(4)  防火管理点検と防災管理点検は、必ずしも一体でなくてもよい 。

大規模地震対応計画書が容易に作成できない理由と審査が通りにくい背景 

<甲種防火管理者新規講習と防災管理者新規講習から見た理由>
 「大規模地震対応消防計画」は甲種防火管理者新規講習及び防災管理者新規講習の資格講習を受講して資格を取得した防災管理者が作成します。 しかしながらこの二つの講習会の講習内容には大規模地震対応消防計画作成のガイドラインに沿った「被害想定の作成」等の内容が含まれていないため、受講しても簡単には「大規模地震対応消防計画」を作成出来ません。

 

  甲種防火管理者新規講習会で配布される防火管理講習テキストⅡに付属するCD-ROMには消防計画作成例、消防計画様式集が収められており、防災管理者新規講習の資格講習会では、新規「大規模地震対応消防計画」をガイドラインに沿って作成するよう指導されますが、時間の関係でガイドラインの講習は行われません。(ガイドラインは、その講習に2日間程度を要する内容量です。)しかも「防災管理講習テキスト」には災害想定に基づいた簡単な消防計画作成例があるだけです。

  

 また付属のCD-ROMも各種届出書や簡単な消防計画作成例(大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドラインの基本的な内容)しか収められておらず、消防機関の審査対象となる細部項目の講習もありません。 このため、この講習のみで防災管理者の資格を取得して、新規に「大規模地震対応消防計画」を作成しようとしても、現実としてほぼ全員の方が作成は無理だと思うでしょう。たとえ、実際にご自分で作成して消防機関に提出したとしても、64項目に及ぶ厳しいチェックを受け、恐らく何回も再提出しなければならなくなるでしょう。

 

 法改正により、全国の企業の社長、防火・防災管理者及び自衛消防隊長の皆様は、ガイドラインという「基本」を参考にして自分で考えた「応用」を組み込んだ「大規模地震対応消防計画」を作成しなければなりません。しかしながらほとんどの方は消防計画の作成や訓練などに携わったことがなく、多くの時間と労力が必要となり、結果として対応できる防災管理体制の構築ができない状況が続くことになりかねません。

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1 ガイドラインとは

 大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成20年10月21日付消防予第272号 消防庁予防課長通知)のことで、改正消防法に基づき、防災管理業務を行われなければならない大規模・高層建物や自衛消防隊設置義務がある防火対象物の管理権原者(ビルオーナー等)及び防災管理者ために、大規模地震災害等に対応した消防計画作成の手引書として作られたものです。


 地震災害等に対応した計画事項及び自衛消防組織の整備に係る共通的な内容を中心に記載されています。 このガイドラインに沿って消防計画を作成することにより、大規模・高層建物全体の特徴に応じた実効性のある計画・体制が構築されるよう、作成の手順や基本構成、地震等の災害対策上のポイント等がまとめられています。


 また、事業形態の違いに応じて着目する危険性や求められる対応等に差異があるため、このガイドラインを踏まえて事業形態ごとに消防計画作成上の留意事項を追加していく必要があります。 

  

 このガイドラインは、一律に形式を示すものでなく、管理権原者(ビルオーナー等)のもとで消防計画を主体的に作成する過程が大事で、実態に即した効果のある防火・防災管理体制の構築に主眼がおかれています。

 2 ガイドライン検討の経緯
 近年、東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や首都直下地震の発生の切迫性が指摘され、社会全体の災害対応力の強化を図ることから、事業所における消防防災体制を強化して自衛消防力を確保することが緊急課題となっております。

 


 しかし事業所における防災計画の作成や訓練の実施等は、現状は行われておらず、内容が不十分なところが多い状況であります。 震災時には、火災と異なる対応が必要となり、当該地域で同時多発的に火災や倒壊建物からの救出事案が発生することから、事業所における自助体制の確立が急務となっています。


 また、防火対象物の大規模・高層化等により急激に多数が利用する大規模・高層化された防火対象物が増加しています。このような防火対象物では、災害時における消火活動、通報連絡、避難誘導、救出・救護について、より高度・複雑な対応が必要となり、適切な対策が施されていない場合の消防防災上のリスクは極めて大きく、事業所の組織体制や活動計画にはなお未整備の部分が多い現状であります。

 

 このため、「予防行政のあり方に関する検討会」が開かれて調査・検討が行われました。その内容は消防審議会において審議が行われ、大規模・高層建築物おいては、多数の者が利用するため円滑な避難誘導が求められるため「大規模地震に対応した自衛消防力の確保」が必要であるという結果がだされました。 大規模・高層建築物の管理権原者にあっては、消防防災上のリスクに伴う社会公共への責任として、「大規模地震等に対応した自衛消防力を確保」するため、大規模地震等に対応した消防計画の作成及び自衛消防組織の設置を義務付が必要とされました。

  

 3 ガイドラインの作成の目的

 

 3 ガイドラインの作成の目的
 ガイドラインの作成は、改正消防法に基づき、大規模地震災害等に対応した消防計画を作成するに当たっての手引き書であり、地震災害等に対応した計画事項及び自衛消防組織の整備に係る共通的な内容を中心となっています。 また、このガイドラインに沿って計画を作成することにより、防火対象物全体で、その特徴に応じた実効性のある計画・体制が構築されるよう、作成手順や基本構成、地震等の災害対応上のポイント等をまとめたものであります。 


 ガイドラインで大事な事は、一律に形式を示すものではなく、管理権原者のもとで、消防計画を主体的に作成するプロセス自体が、実効的な体制構築に資するものであることに主眼を置いています。なお、事業形態の違いに応じて着目する危険性や求められる対応等に差異があるため、本ガイドラインを踏まえ、主要な事業形態毎に消防計画作成上の留意事項を追加していくことが求められている。

4 ガイドラインの対象となる災害
 従来から消防法第8条により、火災の予防及びその被害の軽減のため消防計画を定め、防火管理業務を実施されてきましが、大地震地震災害について防災管理業務として法規制はありませんでした。


 地震のうち東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や首都直下地震等の大規模地震災害発生の切迫性の指摘が法改正の契機となりました。

 

 その被害の軽減のため消防法第36条が追加され、消防法改正によりガイドラインの災害として、火災以外の震度6強程度の地震被害を想定した大規模・高層の防火対象物が対象になりました。 また、大規模・高層の防火対象物での地震以外の毒劇物質の発散その他の総務省令で定める原因で生ずる特殊災害(NBCR 災害)もガイドラインの災害として加えられました。

5 ガイドラインの対象となる防火対象物
 従来から大規模、高層建物の防火管理は、消防防災上のリスクが大きく、全体の状況把握や応急活動が困難となるものであることから、防災センターにおいて総合操作盤等を中心に一元的な消防防災システムの構築が図られてきましたが、大規模地震災害対応のガイドラインはありませんでした。

 

 大規模地震が発生した場合、多数の者が利用する大規模・高層建物で消防防災上のリスクは非常に大きく対応が困難なためガイドラインが求められました。


 これらの建築物においては、群集心理によりパニックが生じやすく、避難時の移動距離が非常に長くなり、地上とのアクセスが構造上大きく制限されること等から、適切な対策が必要とされます。また、社会公共への責任は極めて大きくリスク回避のため一定の措置を講じることが必要とされました。


 大規模、高層建物の防災管理の応急活動は、高度・複雑で防火対象物全体の状況に応じた組織的対応活動が不可欠です。 このため「多数の者が利用する大規模・高層の防火対象物」としては、以下の「用途」「規模等」の要件を満たすものが対象となりました。

 

【用途】
 百貨店、旅館・ホテル、病院、学校、オフィスビル、地下街等(共同住宅、倉庫等は除く)
【規模等】
①延べ面積5万㎡以上
②階数5以上かつ延べ面積2万㎡以上
③階数11以上かつ延べ面積1万㎡以上
④地下街で延べ面積1千㎡以上

 

 対象外となっている防火対象物においても、大規模地震等への対応等について本ガイドラインを参考として対応が必要であります。

6 事業継続・地域防災との関係
(1)事業継続との関係
 防災基本計画においては、企業は、災害時に重要業務を継続するための事業継続計画(BCP)を策定が行われています。 企業の重要な事業の継続という観点においても防計画に基づく防火・防災管理業務は、人命安全の確保や二次被害の防止の点でも必要となります。


 このため、BCPを作成されている場合は、両者が円滑に計画・実施され、特に緊急時に実際の活動現場において消防計画に基づく応急対策が的確に講じられるよう、意思決定プロセスや指揮管理体制の構築、計画・マニュアルの作成、訓練の実施が必要となります。 この場合は、管理権原者のもとで、消防計画を主体的に作成するプロセスが大切であることに主眼が置かれます。 重要な企業の経営と同様に、主体となり大規模地震対応消防計画の作成することにより、適切なトップのマネジメントが実効され防火・防災体制の構築が重要です。また、消防計画及びBCP作成上の災害想定等の検討についても、相互に活用を図ることが効率的であります。

 

(2)地域防災との関係
 大規模地震等に対応した消防計画は、当該地域の地域防災計画等との整合性を確保することが必要です。また、防火対象物において整備されている自衛消防組織や資機材等を活用するとともに、消防団や自主防災組織等との合同訓練を実施して連携強化を図り、自治会に入会して地域の消防防災力の一層の充実を図ることが必要であります。

 


こうした地域貢献を行うことにより、当該防火対象物における応急対応を行う体制が確保されていることが前提であり、このためには、被災状況の把握、応急対応に要する人的・物的資源等の特定、意思決定方法等のプロセスを明確化して消防計画に定めておくことが必要であります。

7 運用上の留意事項
 今回消防計画に新しく盛りこまれることとなる大規模地震等への対応及び自衛消防組織の設置等の取組みが円滑に進められるためには、作成主体である防火対象物側、届け出を受ける消防機関側双方に対する技術的な支援が必要であり、本ガイドラインの活用と併せて、防火・防災管理者等に対する講習や消防防災コンサルタントの防火・防災管理業務の支援を受けて社員教育の充実を図り、わかりやすいチェックリストや関連情報(基礎データ、作成ノウハウ、先進的取組み事例等)の提供を受けて実効ある防火・防災体制の構築を図ることが必要であります。

 

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8 今後の検討課題
 本ガイドラインの内容については、現状で得られている知見に基づき検討を行ったものであるが、今後においても、災害想定手法や災害発生時の適切な対応行動の詳細及びその訓練手法、消防計画の内容の検証及び見直し手法等について調査検討を行い、引き続きガイドラインの充実強化を図るとともに、その普及を図る必要があります。

 

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